本校スティアマルガ准教授が氷期と日本近海の海流がもたらす海洋生物多様性への影響を解明 2025年10月14日|お知らせ 本校、生物応用化学科のスティアマルガ・デフィン准教授が、東京大学総合研究博物館、千葉県立中央博物館、島根大学の研究者らと共同で、日本沿岸に生息する巻貝「スガイ(Lunella coreensis)」の遺伝的多様性とその進化の歴史を解明しました。 本研究は、スティアマルガ准教授が筆頭研究者(Principal Investigator, PI)として主導したもので、「Impact of glacial cycles and ocean currents on radiation events in the Japanese turban snail Lunella coreensis」というタイトルで、今年9月号のアメリカ海洋淡水域学会(ASLO)の学術誌 「Limnology and Oceanography Letters」 に掲載されました(DOI: 10.1002/lol2.70005;なお、オンラインバージョンは2025年3月18日に公開されました。) 本研究では、日本各地の沿岸から採取されたスガイの博物館標本の遺伝子を解析した結果、黒潮海流や対馬海流の影響を強く受けることで、日本のスガイは遺伝的に太平洋系と日本海系に大きく分かれることが明らかになりました。さらに、約3,000年~77,000年前の氷期において遺伝的分化が生じ、特に最終氷期(約18,000年前)以後に急速な放散が確認されました。この結果は、日本の化石記録とも一致しており、氷期と海流の変動が海洋生物の多様性変遷に大きな影響を与えていたことを示唆しています。 本研究には本校卒業生の廣田主樹氏(現:東京大学大学院生)と中島理子氏(現:公務員)も参加し、次世代の研究者育成の観点からも大きな意義を持つ成果となりました。 近年、気候変動による海洋環境の変化が生物多様性に及ぼす影響が懸念されています。本研究は、過去の気候変動が日本沿岸の海洋生物にどのような影響を与えてきたのかを明らかにすることで、今後の海洋生物の適応能力や保全戦略を考える上で重要な知見を提供します。気候変動と生物多様性変遷とその関係を解明することで、データ駆動型アクションによる持続可能な海洋資源管理の科学的基盤を強化します。 論文はこちらから